数々の有名雑誌で撮影を務め、個展や写真集など個人の活動でも成功をおさめている世界的ファッション写真家Tim Walker(ティム・ウォーカー)。
ティムのファンタジーな写真表現の裏側には、妥協しない被写体との向き合い方や写真に対する熱い思いがあります。
今回は、ティムの写真家人生、撮影現場、新作写真集などについてご紹介します。
Tim Walker(ティム・ウォーカー)とは
1970年、イギリスのサリー州出身のファッション写真家。
エクスターアートカレッジにてアートとフォトグラフィーについて学び、19歳でVOUGEのインターンを開始します。
1995年からファッション・アート界で大きな成功をおさめたといわれているアメリカの写真家Richard Avedon(リチャード・アヴェドン)のアシスタントを務め、25歳から本格的に写真家活動をはじめます。
現在では雑誌VOUGE、i-D、Loveなどのフォトグラファーとして活躍しています。また、展示や写真集制作など写真家としての活動もしており、幻想的でロマンチックな世界観で人々に大きな影響を与えています。
美しすぎるティム・ウォーカーの写真作品
他のフォトグラファーには真似することのできないティム・ウォーカーの写真表現。
不思議な世界観とクオリティの高い演出、メイク、衣装は、一度見ると頭から離れなくなります。
出展:yatzer.com
出展:yatzer.com
Tim Walkerのポートフォリオサイトでは、ファッション雑誌で撮影した写真やティムのポートレート作品を楽しめます。
ティムは写真作品だけでなくショートフィルムも制作しており、2011年にはティムが手がけたショートフィルム「ザ・ロスト・エクスプローラー」がシカゴ・ユナイテッド映画祭でベスト・ショートフィルムに選ばれた実績もあります。
写真家というのは…。ティムが語る被写体との向き合い方
ティム・ウォーカーは雑誌、WEBメディアなどのインタビューでさまざまな名言を残しています。
その中で、筆者が特に心に響いたティムが語る被写体との向き合い方、写真家としての考え方についてご紹介します。
i-D UKのプロジェクトで撮影を行った後のインタビューで、時間をかけ被写体とコミュニケーションを図るティムに対し、これまでにも常にそのようなスタンスで撮影をしてきたのか質問されたときの回答。
被写体を表面的に撮るなんてできないよ。目の前の人物と心でつながって、理解しないことには、そのひとの一番おもしろい部分を撮り逃してしまうからね。ずっとそうやって写真を撮ってきたんだ。被写体となるひととしゃべって、そこに心のつながりを感じなきゃならない——撮影が始まる前の10分間、紅茶を飲みながら話すだけでもいいんだ。ひとによっては10秒でつながりを感じる場合もあるし、それより長くかかる相手もいる。でも、誰にでも特別な経験というのがあって、誰もが何かを世界に伝えたいと願っているものだと僕は思う。先日、アリス・ゴダードとキャスティングについて話していたとき、彼女が、「この世に存在する誰もが、写真に捉えられるべきものを何かしら持っている」と言っていたんだ。ひとりの例外もなく、全員がだよ。僕も心からそう思う。あの言葉は、いまや僕の信念ともなっているよ。
インタビューの最後にはファッション界で20年以上のキャリアを誇るティムに若いクリエイターたちへのアドバイスを求められ…。
真実が大切ということ。重要な表現行為というのは、ひとの内側から湧いてくるものでなければならない。ひとに言われてできるものではないんだよ。鏡の前に立って、自分と対峙する——自分が何者なのかをよく知ること。自分自身を知っていれば、自分から逃れられなくなる。その人から湧き出てくるメッセージは、絶対に他人に響くものになるんだ。心のうちから生まれるものは、ほかのひとの心を動かす力をもっている。だから、こう自分に問いかけるんだ——「なにがわたしを突き動かすのだろう?」って。本当に好きなことにしか、ひとは献身なんてできないんだから。
と回答しています。
世界中に認められる写真作品を生み出し続け、数々の実績を残してきたティム。インタビューからは、ただ自分がカメラを持つことを楽しむのではなく、表現したい世界を実現するために何が必要なのか、写真家としての考え方や取り組みを知ることができ、よりティムの写真作品が好きになりました。
世界を魅了する作品制作の裏側
ティム・ウォーカーの撮影風景はYouTubeなどで公開されており、どのようにして作品制作を行っているのか、撮影チームのメンバーそれぞれの意見や進行の仕方が分かります。
撮影の流れやヘアメイクの風景を見ても、人には真似できないチームワークやそれぞれの思いが見えてきます。
ティムの作品とともに、その写真がどのようにして作られたのかを動画で見るとより作品を楽しめます。
ティム・ウォーカーに影響を与えた写真家
i-DのYouTubeチャンネルで公開されたティムのインタビューでは、ティムの幼少期から写真家としての人生が語られており、10分間にとても貴重なティムのエピソードが詰まっています。
インタビューの中で、ティムは写真に興味を持ち始めたころ、ファッションフォトグラファーを目指すきっかけとなった写真家がいたと話しています。
現代のファッション業界で唯一無二の写真家とされるティム・ウォーカーを魅了した写真家は誰なのか、ティムが紹介した写真家についても調べてみました。
Diane Arbus(ダイアン・アーバス)
1923年、ニューヨーク出身のファッション女性写真家。
18歳の時に結婚した夫であるアラン・アーバスから写真を教わり、夫婦でVOGUEやHarper’s BAZAARなどの雑誌で活躍していました。
出展:imaonline.jp
双子の少女を写した作品が有名で、1973年には日本・池袋で「ダイアン・アーバス写真展」が開催されました。
また、ダイアン・アーバスの人生を映画化した「毛皮のエロス」ではニコール・キッドマンが主演を務め注目を集めました。
August Sander(アウグスト・ザンダー)
1876年、ドイツ・ヘルドルフ出身のポートレート写真家。
兵役に就きながら写真を学び、オーストリアの写真館で働いた後、1901年からはオーストリアのリンツに行き写真スタジオで働いていましたがケルンで自身のスタジオを開設しました。
出展:sumally.com
スタジオを運営しながら数々の写真の賞を獲得したアウグストは、ドイツの人々を撮影するプロジェクトをはじめます。当時のドイツの社会を写した作品集「Menschen des 20. Jahrhundert」は農民や女性、階級と職業など7つのテーマに分け販売されました。
初の日本語版!最新作品集「SHOOT FOR THE MOON」
ティム・ウォーカー待望の最新写真集『SHOOT FOR THE MOON』が2019年11月に発売されました。
ケイト・モス、ウーピー・ゴールドバーグなど有名は俳優・モデルが登場し見ごたえのある一冊になっており、初の日本語版写真集ということもあり、日本のティムファンからも大変人気を集めています。
筆者も書店で手に取りましたが、女性の手には重すぎるほどボリューム感がありました。作品に関する文章もあるので、写真とともにティムの描いている世界観を知ることができます。
ティム・ウォーカーの写真集一覧
新作のほかにティムはこれまでに何冊かの写真集を出しています。その中からおすすめの3冊をご紹介します。
【Tim Walker Pictures】
出展:amazon
ティム・ウォーカーの芸術的な写真と、作品制作の裏側を見れる写真集。
写真家のスクラップブックや絵コンテ、コンタクトシートなども収録されています。
【Tim Walker Wonderful Things】
出展:amazon
個展「Wonderful Thingsをロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館で開催した際に展示されていた作品を収録しています。
1ページ1ページに物語があり、写真1枚で見ている人の想像力を豊かにしてくれる素敵な世界が広がっています。
【Tim Walker: Story Teller】
出展:amazon
写真家ティム・ウォ-カーの作品を170点収録。
まるで地球以外のどこかを再現しているような奇妙でユニークなアイデアの数々に圧倒されます。2012年~2013年にはロンドンのサマーセットハウスで個展「TIM WALKER STORY TELLER」を行いました。
さいごに
出展:flickr.com
想像の中でしか成り立たないと思っている世界を、現実で表現してしまうティム・ウォーカーの写真作品。ファッション・アート業界のプロフェッショナルから認められる写真を撮るだけでなく、目に焼き付いて忘れられないほどインパクトのある作品を世に発信し続け人々に影響を与えています。
今後、日本でも写真展を開催してほしいです!
トップ画像出展:superbe.co