家族のカタチを写した作品が高く評価され、現在全国で写真展を開催している写真家 松本欣二(まつもときんじ)さん。
彼の作品は何枚もの写真を辿っていくことで完成し、自身の人生と向き合うことの大切さと、カメラを向けるべき被写体はどこにあるのかを教えてくれます。
今回は、写真展会場である大阪ニコンサロンにお邪魔し、松本欣二さんにインタビューさせていただきました。
2012年 日本写真映像専門学校 卒業
2011年 公益社団法人 日本広告写真家協会 APAアワード2012写真作品部門 金丸重嶺賞受賞
2018年 グループ展「家族と写真」展に参加(クンスト・アルツトギャラリー京都)
松本 欣二 写真展 媽媽(まま)について
出展:ニコンサロン
写真家の松本欣二さんが銀座と大阪のニコンサロンで写真展「媽媽(まま)」を開催。家族という身近な被写体と向き合う松本さんの作品は、多くの人に家族のあり方を考えるきっかけを与えています。
母親は台湾人。父親は知らない。僕は日本で生まれました。母はほとんど家にいてなく台湾人ということもあり、お互いにあまり会話がありませんでした。そのせいか一緒に暮らしていましたが距離感と違和感があり、母との思い出はあまりありませんでした。そして僕が10歳の時に母は何者かに殺害されました。それからずっと母には背を向けて生活をしていましたが、僕にも家族と子供が生まれ、親になり改めて「家族」というのを見つめ直しました。そして、子供の時には気づかなかった母からの愛情を気づくようになりました。この作品は母を見つめ直すのと同時に自分自身を見つめ直した作品となっております。母、子供、父親、親子とは何かと思いながら制作しました。(松本欣二)
ー今回の写真展に込めた思いをお聞かせください。
松本:展示している作品は見る人によっていろいろな捉え方があるかと思いますが、僕の写真や文章を見ることで自分の家族を考えるきっかけになったらいいなと思います。
ー写真の展示に工夫したことはなんですか?
松本:ストーリー性がある作品となっているので、入り口から順番に見ていただけるように展示しました。
また、実際に見ていただければわかるんですけど、作品ひとつひとつの幅をだんだん狭くしてます。展示に動きをつけることで、見ている人が僕の生きた時間を辿っていけるように工夫しました。
松本欣二にとって家族とは
ー写真展は家族がテーマとなっていますが、松本さんにとって家族とは?
松本:僕は生まれて2か月後には母親の元を離れて台湾人のベビーシッターに預けられていたんです。
そこには、僕と同じように母親が忙しくて預けられている子供がたくさんいて、その中で5歳まで生活をしていました。
5歳から10歳までは母親と暮らしていましたが、今回展示している新聞の写真に書かれているように、10歳の時に母親が亡くなってしまい、お葬式に駆けつけてくれたベビーシッターのおばあちゃんが育ててくれ、身寄りのない僕にとっては、そのおばあちゃんが家族になっていました。
ですので、僕にとって家族は「いつでも戻ってこれる場所」です。
写真をはじめたきっかけ
ー松本さんが写真をはじめたきっかけは?
松本:僕は高校生の時に学校で写真を学んでいました。ひとつ上の先輩が自分の気持ちを被写体に乗せた心象写真を撮ってて、それが僕の心に響いて「写真ってこんな表現ができるんだ。」と知って写真を追求するようになりました。
学校では先生からいろいろな課題を与えられて、課題をこなしていくうちに自分を見直していくようになりました。
そこから、写真を撮るにあたり自分の過去と向き合うことは避けて通れない道だと気づいたんですけど学校を卒業してからも中々直視できなくて…。
そんな時に子供ができて、お母さんと子供の様子を見て・体験して「自分もこんな時があったんだな」って実感して、はじめて自分を見つめ直せるようになりました。
ーその時は、どんなカメラを使用していたんですか?
松本:初めてのカメラは、Canon 30Dですね。学生時代はスナップ写真を撮ることが多かったです。
ー写真を撮るうえで、松本さんがモチベーションにしていることはなんですか?
松本:僕は今年の3月まで卒業校の教員をしてて、学生に写真を教えてたんです。そこで教えている学生の作品を見ることで自然とモチベーションも上がりました。
あと、同級生に山本 雅紀さんという方がいて、山本さんもニコンで写真展を開催していたので、同級生の活躍を見ると刺激をもらえて自分も頑張らなきゃという気持ちになります。
これからのビジョンと伝えたいこと
ー写真活動のこれからのビジョンを教えてください。
松本:現在展示している作品の他にも制作中のものが2つあって、その1つが先ほどお話しした育ててくれたおばあちゃんです。もう1つは、大阪に住んでいる僕と同じように親が台湾人の方を撮影させてもらっています。
今は、ずっと先のビジョンというよりも、目の前にある被写体と向き合っています。
ー関西写真部SHAREの読者・写真をしている人へ一言お願いします!
松本:写真のテーマはなんでいいと思います。自分の半径100m以内に挑戦するべきテーマが絶対にあるので、無理してテーマを決めず、身近なものを見つめ直してほしいと思います。
ーありがとうございました!
松本:こちらこそ、ありがとうございました!
ニコンサロン写真展 媽媽(まま)開催概要
タイトル | 松本 欣二 写真展 媽媽(まま) |
開催期間 | 大阪ニコンサロン 2019年3月28日(木) 〜 2019年4月10日(水) 日曜休館 |
開催時間 | 10:30~18:30(最終日は15:00まで) |
アクセス方法 | 〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田2丁目2−2−2 ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー 13階 |
URL | https://www.nikon-image.com/activity/exhibition/salon/events/201706/20190306.html |