2018年9月、多くの芸術家やフォトグラファーが集まるスポットとして知られる中崎町にオープンしたカフェギャラリー「きのね」。
カフェギャラリーきのねでは、写真展だけでなく芸術作家のアート作品やイラストなどの幅広い作品の展示を行っており、出展者はもちらん、来場者も訪れるたびに沢山の刺激をもらえる場所となっています。
そこで、オーナーであるきのねのまことさんにインタビューをさせていただきました。
人やモノが集まり、次のステージに進める場所をつくりたい
ーカフェギャラリーを始めようと思ったきっかけを教えてください。
ギャラリーを始める前はきのねの徒歩1分ほどのところにある一軒家のガレージを改装して作られたギャラリーを借りて、1年弱毎月5名ほどジャンルを問わずお呼びしてグループ展をしていました。
あるとき、大家さんの事情でガレージが使えなくなってしまったんですけど、それと同時に今カフェギャラリーきのねをしているスペースが空くという話を聞いて、当時正社員として仕事をしていましたが、思い切ってギャラリー運営に挑戦することを決意しました。
ー「きのね」という名前の由来は何ですか?
人や情報が一旦きのねに集まって、また次の場所へと繋がっていくような形が木の幹に似ていることから、スタート地点になる木の根元をイメージして「きのね」にしました。
ーなぜ、ギャラリーのオーナーをしようと思ったんですか?
個人的に絵を描いたりと表現者側ではあったんですけど、勤めてた会社は体育会系で自分とは文化が違いすぎて居心地が悪かったんですよね。自身でアートイベントに出展することが多く、ギャラリーとの繋がりとかはあまりなかったのですが、ある作家さんをきっかけに中崎町に来てから、沢山の繋がりができました。作家やフォトグラファーの方々と出会う中で、たった一度の人生「表現する人たちと一緒に生きていきたいな」と思うようになっていて、自分も表現者でありつつアート活動する人たちをサポートするためにギャラリーという「場所を持つ」手段を選びました。
みんなが均等に作品を見れるカフェギャラリー作り
ー写真に限らず、イラストなどさまざまなジャンルのアート作品を展示されていますよね。幅広いジャンルの作品を展示している理由を教えてください。
ですので、絵画・イラストの展示の時にもぜひ写真家の方々にご鑑賞いただきたいですし、その逆も然りです。
ー内装へのこだわりはありますか?
なるべく、作品以上に目立つものがないように心がけています。カフェも併設していますが、 全体を通して『作品が主役』 であることを徹底しています。
あとは、作家さんの要望にできるだけ応えられる状態にしていたいので、例えば 壁は白と黒とを入れ替えられるように しています。ギャラリーは白い壁のところが多いかと思いますが、きのねでは黒い壁も用意しているので、黒い壁が自分の作風やテイストに合っていると考えている作家さんからは喜んでいただいています。
ーギャラリーだけでなくカフェも行なっているんですね!
はい、幅広い世代の人に気軽に立ち寄って欲しいのでカフェサービスもしています。
作家ではない方にも気軽にアート鑑賞をしてほしいし、作家さんたちと出会ってほしいなと思っています。
カフェギャラリーでよく見かけるのが作品を展示している壁にテーブルがくっついていたりする所で、そういったレイアウトにすると作品を見たい方が近づいて見ることができなくなってしまうので、カフェの客席数を犠牲にしてもできるだけ作品を見たい方に快適な時間を過ごしていただけるよう、平等に作品に近づいて鑑賞できることを最優先にレイアウトしています。
僕自身いろいろなカフェギャラリーに行く中で、見たい作品の近くにお客さんがいて断念してしまった経験があるので、それだけは絶対なくそうというのがギャラリーを始める際に決めた店内コンセプトの一つでもあります。
また、いろんな作家さんの画集や写真集も置いており、少しでも応援している方々の認知度や好感度が上がればいいなと思っています。
ひとつのジャンルに縛られず新しい出会いを生み出す
ーこれまでに開催してきた展示の中で、特に印象に残っている展示テーマはありますか?
テーマが尖っていることもあって、最初はみんなどうスタートを切ればいいか悩んでいる様子もありましたが、最終的には約20名参加してくれてすごく盛り上がった企画です。
出展者の方々に普段自分がしない表現に挑戦してもらうことで、「どうやって見る人を楽しませようか」ということに頭を使って作品制 作してくれていたのが嬉しかったですね。
それに、ジャンルを絞らなかったことでデザイナーや絵描きさん、家具屋さんなど、あらゆる職種の人たちが参加してくださり、それぞれ が繋がれたので、この企画は色々な方面からアプローチをかけれる媒体発見もよかったです。 来場者も最初の4日間で 100名以上の方にお越しいただき、平日も休日との境がない程に大変忙しく、これまでで最も多くの方に楽しんでいただいた企画でもあります。
出展者の方も、見にきてくれた方もみんなが「楽しかった」と言ってくださった企画で、この感じはすごく大事だなと思っています。
ーカフェギャラリーきのねを運営していて良かったと思うのはどんな時ですか?
閉店間際にたまたま数名の作家さんが集まった時は、そのまま店内で晩御飯をご一緒したりもしています。まったくこれまで繋がりがなかった作家さんたちで店内が埋まり、気がついたら全体がひとつになって話が盛り上がったりすると、「場所を持って本当によかっ た」と感じます。
ーオーナーから見て、出展者に必要なことは何だと思いますか?
僕自身、お世話になってた写真ギャラリーのオーナーからは、「ひたすら絵を見ろ」と言われました。すべての経験に置いて、常にインプットを心がけることが大事だなと思っています。
あとは展示を考える際、SNSなどWEBで見てもらうこととアナログで鑑賞してもらうこととでは見え方が違うので、直接見てもらうための見せ方はWEBとはまったくの別物と捉えて挑んでいただきたいです。
出展者に「観察する」きっかけを与える企画展を意識
ーカフェギャラリーきのねの強みを教えてください。
2018年9月にオープンしたばかりで強みと言える部分はまだまだ少ないなと思っています。
ですので 、まずは 他で は やらないであろうこと を企画し、差別化を心がけています。ギャラリー をはじめてからまだ1年も経っていませんが、時に「きのねさんで企画している展示はいつも面白いよね」って言ってもらえる機会がでてきたので、僕の中ではまだはっきり言えませんが、周りの反応や意見からきのねの強み をもっと見出せていけたらと思っています。
ー確かに、牛乳パック展などテーマが興味をそそります!
企画の一つとして「ぜったいおかしいシリーズ○○」というシリーズを増やしていきたいんですよね。 「おかしい」って一定の普遍的な正解がわかっていないと作れないから、正解から抜け出して独自の表現を見つけられるところが魅力的なんです。 お題に対して「 正しい 」を知ろうとすることは一つの物の観察だと思っていて、そうやって観察する機会にもなる展示になったらいいなとテーマを決めています。 観察して、何 をどういじったら面白くなるのかを考えているうちに今まで自分が得た知識が出てきたりすので、その流れを作家さんにも楽しんで欲しいです。
写真以外の作品を見る大切さを知ってほしい
ーこれからのビジョンを教えてください。
きのねだけでなく、中崎町に は魅力的なお店 が多く、ぜひ 知って欲しいなと思っていて。こんなにギャラリーやアート なお店が密集しているスポットって中々ないので、きのねに来ていただいた方にできるだけ色々なお店を紹介したりしています。一人だけでやろうとする んじゃなくて、いろいろと繋がりをつくることで面白いこができる地域だと考えているので、中崎町にある多くのお店と繋がりを広げて行きたいです。
観光で大阪に来てくださった方や、関西在住ではない作家さんや写真家さんにも「帰る前に中崎町だけは寄っ ておきたい!」って言われるようになるのが理想です。
ー最後に、関西写真部SHARE読者へのメッセージをお願いします!
自分の好きなジャンルばかり追い求めると、新しい表現を見出すことは難しいように思うので、ぜひ 写真以外の作品も見る機会を増やしてほしいなと思います。
特に、年齢が上がるに連れて新しいものを吸収する力って弱ってくると思っていて、考え方が固まってしまう前に色々な作品を見る習慣をつけて欲しいです。写真を展示する場合であれば、写真だけじゃなくて額装なども表現のひとつになるので、トータルでの見せ方を追求されてみてはいかがでしょうか。
実際に来てもらわないと作品の魅力は伝わりにくいですし、 実際に出展してみないと得られないことも沢山あると思うので、ネットから離れ実際にギャラリーに訪れて、目や肌で作品に触れることをまたその場の空気感なども楽しんでみてくさい。
ギャラリー名 | カフェギャラリー「きのね」 |
場所 | 大阪市北区中崎3-2-14 |
公式Twitter | カフェギャラリー「きのね」 |