
モノクロ写真に心ひかれたことはありませんか?白と黒とグレーが織りなすその世界は、カラー写真とはまた違った魅力があります。
一見ハードルが高そうに思えるモノクロ写真ですが、最近はカメラの設定や編集ソフトなどで手軽に楽しめるようになりました。そこで今日は、モノクロ写真の基本的な撮影方法と魅力的な写真を撮るコツをご紹介します。
カラー写真しか撮ったことがないという方も、ぜひ一度モノクロ写真にチャレンジしてみませんか?
モノクロ写真の歴史
まずは簡単にモノクロ写真の歴史を振り返ってみましょう。
1826年、フランスのニエプス兄弟が世界初の写真画像を作ることに成功し、写真の歴史が始まりました。もちろん当時は白黒画像で、なんと8時間も光を当てる必要があったそう。
そこから先人たちによる数々の研究と発明を経て、一般にも写真が普及するようになったのは1889年、アメリカのイーストマン・コダック社がロール型の白黒フィルムを発売してからのことでした。その後、1936年にカラー用写真フィルムも発売されます。
では1936年以降はカラー写真の時代になったのか…というと、実はそうではありません。
実は1970年代まで、カラー写真はモノクロ写真よりも芸術的に低い位置にあるとみなされていました。つまり20世紀後半に差し掛かるまで、アート分野ではモノクロ写真が全盛だったのです。その間、数々の名作が生み出されました。
例えば20世紀を代表する写真家、アンリ・カルティエ=ブレッソン。完璧な構図が注目されがちですが、実はグレーの豊かな階調が魅力の1つでもあります。
出典:アジェ・フォト
日本の巨匠、植田正治のモノクロ写真も有名です。人をオブジェのように配置した独特の作風は、モノクロだからこそ、その世界観に没入できます。
出典:amazon
20世紀は名作モノクロ写真の宝庫。写真集も数多く発売されていますので、ぜひその魅力を味わってみてくださいね。
モノクロ写真の5つの撮影方法
それでは今回の本題、モノクロ写真の撮影方法を5つご紹介します。
1カメラの設定をモノクロにする
近年のデジタルカメラでは、設定でモノクロ撮影ができる機種がほとんど。
筆者が使っているFUJIFILM X-T30の場合、画質設定>フィルムシミュレーション>「ACROS」もしくは「モノクロ」を選択することで撮影できます。さらにフィルター機能を使えば、選んだフィルターカラーに応じて特定の色域が濃くなり、コントラストの調整が可能です。
お使いの機種によって設定方法は異なりますので、確認してみてくださいね。
この方法の良い点は、液晶モニターでモノクロの状態を確認しながら撮影できるところです。仕上がりがイメージしやすいですし、モノクロ写真の練習に最適。
最初から「モノクロ写真を撮る」と決めているときは、ぜひカメラの設定をモノクロにしましょう。
2カラーで撮影して現像するときにモノクロにする
例えばLightroomでは、色表現を「白黒」にするだけで簡単にモノクロ画像に変換できます。そのほか、プリセットを使ってモノクロにすることも可能です。
あとは写真に合わせて補正していけばOK。
現像後でも、Photoshopなどの画像編集ソフトでモノクロにすることもできます。
3フィルムカメラの「白黒フィルム」を使ってレトロに撮る
上記は私が大学時代に撮影したモノクロ写真です。当時は自分で現像し、暗室で印画紙に焼き付けていました。
ご自宅に暗室がある人はなかなかいらっしゃらないと思いますので、基本的にはモノクロフィルムで撮影した後に写真店か家電量販店で現像・プリントしてもらう形になります。ただし店舗によっては対応していなかったり、別のラボに出すために納期がかかったりすることも。現像に出す前に一度確認することをおすすめします。
フィルム撮影の魅力は、なんといっても粒子感。デジタルカメラで撮影した写真はピクセル(四角形)で構成されていますが、フィルム写真は粒子(円形)で成り立っています。その分、柔らかい雰囲気に。
特にモノクロフィルムはカラーフィルムよりも粒子が際立ちます。
種類は少なくなったものの、現在も各メーカーから白黒フィルムが発売されています。先ほど少し触れた富士フイルムのネオパン100ACROSSⅡやイルフォード HP5PLUSなどが手に入れやすく、おすすめです。
フィルムカメラをお持ちの方は、ぜひ白黒フィルムでの撮影にもチャレンジしてみてくださいね。
4チェキでもオシャレなモノクロプリントを撮って印刷できる
出典:amzon
実はチェキでもモノクロ写真が撮れることはご存じでしょうか?
方法は簡単、通常のチェキフィルムの代わりに「チェキ専用フィルム モノクローム」をセットするだけ。手軽におしゃれでアーティスティックな写真が撮れます。
フィルムでモノクロ写真を撮影してみたいけれど、いきなり白黒フィルムはハードルが高い…という方は、まずはチェキから楽しんでみませんか?
5スマホアプリでも簡単にモノクロ加工ができる!
スマホ写真でモノクロを楽しみたい!という方はアプリがおすすめ。
iPhoneなら標準のカメラアプリにモノクロフィルターが搭載されていますし、Androidもほとんどの機種がモノクロ撮影可能です。
他にもモノクロ加工が楽しめるアプリが多数リリースされており、明るさやコントラストを細かく調整できるものや、フィルム調に撮影できるタイプも。お気に入りのアプリを見つけて、スマホでもモノクロ写真を楽しみましょう!
どんな写真がモノクロに向いているの?
では一体どんな写真がモノクロに適しているのでしょうか?
良いカラー写真をそのままモノクロに変換したとしても、必ずしも同じような魅力が出るとは限りません。カラーだと色の違いで目立つ被写体も、モノクロだと周囲に埋もれて主題がわからなくなってしまうこともあります。キーポイントは「色がなくても魅力的に見える被写体を撮ること」です。以下の3つの点を意識すると良いでしょう。
1光と影
モノクロ写真は白と黒の明暗で表現されます。光が強く当たっているところは白く、光が当たらない箇所は黒に。その間の階調はグレーです。
カラー写真でも光と影は重要ですが、モノクロ写真は色情報がない分、光の強さや角度が少し違うだけで大きく印象が異なります。光と影のコントラストが曖昧な写真はのっぺりした印象に。明暗差がはっきりしている方が立体感を感じられます。モノクロ写真では「ハイライトを意識しよう」と言われるゆえんです。
とはいえ、意図しない白飛びや黒つぶれは考えもの。モノクロ写真の魅力にはグレーの要素も多大にあるのです!特にポートレートでは、なめらかなグレーの階調が柔らかさや美しさを演出します。コントラストが高い方がメリハリのある写真になりますが、グレーも意識して撮影・現像するとより繊細な表現ができますよ。
2質感
モノクロ写真は、カラー写真よりも質感にフォーカスできます。たとえば、上記は公園の木をアップで撮った写真ですが、色がない分、木の表面の質感が際立ちます。
3形
下記の写真をご覧ください。
何もないグレー!実はこれ、わざと雲1つない空を撮影してみました。青ければ空だとわかるかもしれませんが、モノクロだと何の写真なのかわかりませんよね。
雲があれば空の写真だと理解することができます。
このように、モノクロ写真における形の要素はとても重要です。
今の例は極端でしたが、モノクロ写真はフォルムそのものを際立たせ、見る人の想像力を刺激します。
次の写真は放置された車のタイヤを撮ったものです。すっかりパンクして地面にのめりこむ勢い!
色情報がない分、タイヤの形状に目が行きます。朽ちた建物や廃墟など、月日の流れを感じさせる被写体はモノクロ写真と相性が良いですね。
「面白い形だ!」と思ったら、モノクロで撮ってみるとより魅力的な写真になるかもしれませんよ。
モノクロ写真をプリントしてみよう
せっかくモノクロで写真を撮ったなら、プリントも楽しみましょう!モノクロ写真はインテリアとしても優秀。よくおしゃれなカフェにも飾ってありますよね。色がない分、どんな部屋にも馴染みます。
ご自宅にプリンターがある場合は、プリンタードライバーでモノクロ印刷を設定すればOKです。
「モノクロ写真は白と黒なんだからカラーよりも簡単にプリントできるのでは?」と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。何度か触れていますが、モノクロ写真には繊細なグレーの表現が不可欠。また、黒に締まりがないと良い写真になりません。
作品用などこだわりの写真を印刷するときは、8色搭載など高性能な機種を使用することをおすすめします。
また、印刷する用紙選びも重要です。筆者が写真部時代に暗室でプリントしていたときも、印画紙の種類によって全然仕上がりが違いました。それはプリンターの出力でも同じこと。光沢とマットの違いだけでもかなり見え方が変わりますので、ぜひ色々試してみてくださいね。
まとめ
写真の原点ともいえるモノクロ写真。その奥深さはカラー写真以上といえるかもしれません。モノクロ写真を撮影していると、光と影や構図を意識するようになるので、より写真が上達しますよ。
ぜひチャレンジしてみてくださいね!