カメラ・レンズでは、肉眼では見えにくい星座や天の川などもハッキリとした写真にできます。
しかし、きれいな星空を撮影するにはカメラ・レンズの選び方が重要です。
本記事では、星空撮影に最適なカメラ・レンズについて解説していきます。明るく見える星々でも意外と暗いため、星空撮影では他の被写体とは違うテクニックが必要です。
これから星空撮影にチャレンジしてみたいという方も参考にしてみてください。
星空撮影に最適なカメラ・レンズを知ろう
スマホやコンデジでも星空撮影は可能ですが、きれいな星空写真は難しいです。本格的に星空撮影を始めるなら、レンズ交換式のカメラをひとつ手に入れたほうが良いでしょう。
星空撮影用のカメラは、次の点を重視するという選び方があります。
- 長秒ノイズや熱に強い
- 高感度ノイズに強い
長秒ノイズや熱に強いカメラ
ノイズには長秒ノイズ、高感度ノイズと大まかに2種類あります。
ノイズの種類のうち、シャッタースピードを遅くするほど、発生しやすいのが「長秒ノイズ」です。長秒ノイズが増えると余計な点々のようなものが星空写真に増えてしまいます。
カメラのイメージセンサー(撮像素子)に発生する熱が、長秒ノイズの原因です。
しかし、暗い星々を写真にするには、シャッタースピードを遅くしないといけません。デジタル一眼レフカメラはボディ内に熱がこもりにくい作りになっているため、星空写真に最適ですよ。
高感度ノイズに強いカメラ
ISO感度(光を増幅させて写真を明るくする機能)を上げるほど、発生しやすいのが高感度ノイズです。高感度ノイズはさらに輝度ノイズ、カラーノイズに分けられます。
輝度ノイズはザラザラ感が、カラーノイズは余計な色(赤、緑、青)が写真に写り込む現象です。最近では技術の進歩もあり、高感度に強いカメラが登場してきました。高感度に強いカメラかどうかは、常用ISO感度を見ると分かりやすいです。
星空撮影を始めたいときは最大の常用ISO感度が25600以上のカメラを選ぶと良いでしょう。
特にフルサイズデジタル一眼レフカメラは、イメージセンサーのサイズが大きいため取り込みできる光の量が多くなります。そのため高感度ノイズをなるべく抑えたい星空撮影にも最適です。
カメラと同じように選び方が重要となるのがレンズです。星々は地球の自転により、見かけ上少しずつ動いていきます。
F値の大きい暗いレンズになるほど、シャッタースピードが遅くなり、星々が流れやすいです。暗いレンズはノイズが増えやすいため、星空撮影ではなるべくF値の小さい明るいレ
ンズを選んだほうが良いでしょう。
明るい広角レンズを選ぼう
レンズには広角レンズ、標準レンズ、望遠レンズと大まかに分けて3種類あります。
レンズの種類のうち、広範囲の星空を撮影したいときに便利なのが広角レンズです。一般的には焦点距離14mm~35mmまでの広角レンズが広範囲の星空撮影に適しています。
レンズには単焦点レンズ、ズームレンズとありますが、単焦点レンズのほうが明るいものが多いです。
広角ズームレンズだと明るくてもF2.8ですが、広角単焦点レンズではF1.4という明るいものが見られます。ただし、単焦点レンズはズームレンズのように焦点距離を変えられませんので、単焦点レンズを選ぶ際には注意が必要です。
風景を入れて広々とした星空写真を撮影したいときは、14mmの広角単焦点レンズが便利です。24mmの広角単焦点レンズは天の川を中心とした構図の星空撮影に使いやすいです。35mmの広角単焦点レンズは天の川の迫力を増したいときに適しています。50mmの標準単焦点レンズだと、風景と星空を入れる構図が難しいです。
構図に入れたい星々が低い位置にあるときは良いのですが、50mmの標準単焦点レンズは使いみちが限られます。
星空写真の撮影テクニックをご紹介
次からは、星空写真の撮影テクニックをご紹介していきます。まずは基本のカメラの設定からご覧ください。
基本のカメラの設定
デジタル一眼レフカメラには、次のような様々な撮影モードがあります。
- Pモード(F値とシャッタースピードはカメラが決定)
- Sモード(F値はカメラが決定、シャッタースピードは撮影者が決定)
- Aモード(F値は撮影者が決定、シャッタースピードはカメラが決定)
- Mモード(F値とシャッタースピードは撮影者が決定)
星空撮影を楽しみたいときは、カメラをMモードに設定すると良いです。
星にピントを合わせる方法
星空撮影では、無限大(∞)にしてもピントが合わないことがあるため、意外と難しいです。被写体が暗いため、カメラのオートフォーカスでのピント合わせは期待できません。
そんなときは、次の方法で星にピントを合わせてみてください。
- 明るい星を探す
- カメラをライブビューに切り替えて液晶モニターに拡大表示させる
- 星が最も小さくシャープになるまでレンズのリングを回す
ピントが合ったら、いったん星空を撮影し、液晶モニターで確認しておきましょう。明るい星が見当たらない場合は、いったんISO感度を上げるとピントを合わせやすいです。ピントが合ったら上げたISO感度を元に戻してください。
星空撮影中にピントがずれないように注意しましょう。
最適な露出ワーク
星々が流れないように撮影するには、露出ワークが大切です。
露出ワークはF値とシャッタースピード、ISO感度で設定できます。
撮影時の状況によって異なりますが、星々をなるべく点にしたいときは次のように設定すると良いでしょう。
- F値はなるべく開放
- シャッタースピードは15秒~30秒ほど
- ISO感度は1600~6400ほど
いったん星空を撮影してみて、明るすぎる、暗すぎるときは適度になるまで設定を変更してみてください。シャッタースピードが遅くなるほど、星々が流れやすいため、なるべく早くしたいところです。
しかし、ISO感度を上げてシャッタースピードを早くすると、今度はノイズが気になってきます。星々の流れ、ノイズが許せる範囲でシャッタースピードとISO感度を設定するのが星空撮影のポイントです。
広角レンズの焦点距離によって、星々が流れやすいシャッタースピードの上限が異なります。
よく言われているのが、次の計算式で求められる500ルールです。
「500÷レンズの焦点距離=シャッタースピードの上限(フルサイズの場合)」
たとえばレンズの焦点距離が24mmのときは、次のシャッタースピードが上限の目安です。
「500÷24=約21秒」
予め持っているレンズの焦点距離で、シャッタースピードの上限を計算しておくと良いでしょう。
ホワイトバランス調節
ホワイトバランス(色温度)はケルビン(k)で色味を表します。
カメラの場合はケルビンの値を小さくするほど青味が強く、ケルビンの値を大きくするほど赤味が強くなるのが基本です。
カメラでは次のように様々なホワイトバランスのプリセットがあります。
- 太陽光
- 曇天
- 蛍光灯
- タングステンなど
赤みが気になるとき、青味のある星空写真にしたいときは、ホワイトバランスのプリセットをタングステン、または蛍光灯に変更してみると良いでしょう。
カメラの記録モードをJPGからRAW(生のデータ)へ設定しておくと、星空撮影後でもホワイトバランスの調節ができて便利です。
構図テクニック
風景と天の川を入れる構図でも、風景写真と同じように水平を出すことが大切です。
カメラには電子水準器が付いているものが多いため、水平が出るようにカメラの向きを変えておきましょう。
星空写真の主役は風景ではなく星空となります。
風景と星空のバランスは、星空のほうを大きく取る構図に決めたいところです。
目安としては構図の4分の3が星空、残りの4分の1を風景にすると主役の星空が引き立ちやすいです。
あると便利な撮影グッズ
次からは、星空撮影時にあると便利なグッズをご紹介いたします。
特に星空撮影時に準備しておきたいのが、しっかりとした「三脚」です。15秒~30秒ほどのシャッタースピードだと、手持ちでの撮影は厳しくなります。三脚によって耐荷重が異なるため、持っているカメラとレンズの合計重量にあったものを選びましょう。
耐荷重ギリギリの三脚だと不安定になりやすいため、余裕のある耐荷重の三脚を選んでみてください。
たとえばカメラとレンズの合計重量が2㎏のときは、耐荷重4㎏の三脚といった選び方です。
他にもあると便利なのが、「リモートレリーズ」という電子式の撮影グッズ。
カメラのシャッターボタンを直接指で押すと、星空写真にブレが生じることがあります。そんなときでも、リモートレリーズがあるとカメラのシャッターボタンを指で押すことなく、星空撮影ができます。
また、夜通し星空撮影を行うという方は「予備バッテリー」もあったほうが良いでしょう。
まとめ
星空撮影では、常用ISO感度25600以上のフルサイズデジタル一眼レフカメラを選びたいところです。
星空撮影に使うレンズは24mm F1.4の明るいものがひとつあると便利。しかし、フルサイズデジタル一眼レフカメラと明るい単焦点レンズは価格が高くなるのが難点です。
予算が足りないときは、中古カメラと中古レンズで揃えるという方法もありますよ。
新しいカメラのほうが高感度に強いため、カメラは最新のもの、レンズは中古という選び方も良いでしょう。