
20年以上にわたりナショナル・ジオグラフィック誌のフォトグラファーを務める、アメリカの報道写真家Steve McCurry(スティーブ・マッカリー)。
世界各地で民族衣装を着た人々の写真をまとめた作品集「ポートレート」や、「アフガンの少女」では数多くの賞を獲得し、世界中が認める有名な写真家として評価されています。
写真を見ている人が世界を冒険しているような気分にさせられる作品を発信し続けるSteve McCurryの経歴と、これまでの写真作品をご紹介します。
Steve McCurry(スティーブ・マッカリー)とは
1950年4月23日、ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれ。アメリカのフォトジャーナリストです。
ペンシルベニア州立大学で映画や芸術について学び、大学卒業後2年間新聞社で働いた後、フリーランスのフォトグラファーとして世界中を旅し始めます。
アフガン紛争を捕らえた初めての写真は世界中に発表され。1980年アフガニスタンの作品でロバート・キャパ賞を受賞しました。その後もイラン・イラク戦争、カンボジア、フィリピン、湾岸戦争、ユーゴスラビアなど世界中の様々な紛争を取材しています。
2002年には、17年前に撮影したアフガニスタンの緑の瞳が印象的な少女を探し出し日本でもさまざまなメディアが取り上げるほど話題になりました。
現在ではナショナルジオグラフィックをはじめとする数多くの雑誌や本の表紙を撮影し、12冊以上もの写真集を販売、数多くの展示をしています。
世界中を取材するSteve McCurryの写真作品
Steve McCurryは各国をまわり人々の生活をあらゆる視点から写しています。
Portraits(ポートレート)
1枚のカラー写真から人間のパワーを感じられるSteveのポートレート作品。
Steveは戦争が人間に与える影響に焦点を当て、戦争により国の景観がどのように変化したのかを捉えるだけでなく、戦争が起こっている国で暮らす被害者の顔にも注目し撮影しています。
【キューバ】
【チベット】
【パキスタン】
【ペルー】
Steveの写真・取材は世界中の有名な雑誌で取り上げられています。
自身が魅了された国を何度も訪れ、その国の宗教儀式や伝統的な衣装を撮影し写真集や展示で発表しています。
Our Diary Bread(毎日のパン)
Steve McCurryが各国の朝食に着目しポートフォリオにまとめたOur Diary Bread。写真の情報だけで、その国の食文化や朝の過ごし方が分かります。
【パキスタン】
【アメリカ・NY】
【アフガニスタン】
【クロアチア】
私たちにとっては当たり前の毎日も、他の国ではまったく違った過ごし方をしていることがSteveの写真から学べます。
Sleep(睡眠)
Sleepはとてもユニークな写真が多く、世界中を取材しているSteveにしか切り取れない作品の数々に惹かれてしまいます。
【タイ・バンコク】
【ミャンマー】
【インド】
【ネパール】
さまざまな年齢、職業の人々の寝ている姿だけでなく、その背景に写るものや、撮影された時のシチュエーションを想像するとより作品を楽しめます。
Water(水)
人々の生活、そして地球に欠かせない「水」をテーマに撮影された写真作品。
ダイナミックな風景写真から、いかに人の生活に水が必要不可欠なのかを伝える写真まで、水の影響力をカメラでおさめています。
【ミャンマー】
【日本】
【アフガニスタン】
【エチオピア】
Steve McCurryが写した日本の景色
大々的にSteve McCurryが来日しているとの情報はないものの、ポートフォリオには日本各地で撮影した作品も掲載されています。
作品の中には東日本大震災で大きな被害を受けた気仙沼の当時の姿や、日本のサラリーマンの実情、冬の日本の景色などさまざまな場所で撮影しています。
【宮城県・気仙沼】
【京都】
【東京】
【東京】
【長野県・山ノ内】
WEBナショジオインタビューでSteve McCurryは“世界の仏教文化を追う取り組みを続けている”と語りました。
日本もSteveが注目する国の一つに挙げられているので、今後日本で撮影した写真作品が発表されることを楽しみにしています。
スティーブ本人が語る撮影の裏側
Steve McCurry本人が語る写真家として歩んできた人生と写真作品の解説ムービー。
ギャラリーで展示作品を見ながら当時撮影した写真の背景について話している貴重な映像です。
世界中を旅しながら取材をしていたSteveが目にした光景、1枚の写真に込められたストーリーは、写真やアートが好きかどうかは関係なく、私たちの生活がどれだけ恵まれているかを実感させられます。
動画では「good photographs are made up of various elements you.”( 良い写真はさまざまな要素で構成されています)と話しており、偶然出会い撮影したような印象を受ける写真にも、Steveの写真には一枚一枚必ずその時の彼の思いや被写体との関係性があります。
体の作りや人生の長さは同じなのに、なぜ別の服を着て、それぞれの国の食べ物を食べているのか。一見、被写体がカメラに向かい真っ直ぐな視線を送っているだけのように見えても、実際には人によって違いがあり、Steveの作品を通じて自分を着飾っているものは何なのかを再確認することができます。
「アフガンの少女」が世界中で話題に
“この女の子に対する好奇心は圧倒的だった”
1984年12月、Steve McCurryはパキスタンの難民キャンプである12歳の少女に出会いました。緑の瞳が美しいその少女を撮影した写真がナショナルジオグラフィックの創刊125周年を記念する特別号の表紙に選ばれ、難民やこの地域の政情不安の国際的な象徴となり、20世紀でもっとも有名な一般人と言われていました。
その後、少女は不正な身分証を使って違法滞在していた疑いパキスタンで逮捕されてしまいます。
2002年には名前も行方も知らなかった少女をSteveが探し出し再び全世界に衝撃を与えました。そして、アフガニスタンには35万人以上もの難民がいることや、パキスタンは6万以上の身分証明書が外国の難民によって不正に取得されているという事実も報道されました。
1985年6月号の表紙を飾った17年後、やっとの思いで再会を果たした記事「アフガン難民の少女発見」が2002年4月号に掲載され、大人になったアフガンの少女が再びナショナルジオグラフィックの表紙に飾れられました。
Steveは少女との再会に“17年前に写真を撮ったときと同じくらい印象的でした”と話しています。
Steve McCurryの代表的な写真集
これまでに10冊以上もの写真集を発表しているSteve McCurry。その中でも代表的な写真集を何冊かご紹介します。
Portraits
出典:amazon
世界中を旅しながら遭遇した印象的な人々の肖像画をまとめたポートレート作品集。
話題となったアフガンの少女を始め、ランカやカンボジア、ミャンマーで撮影した少年から大人、花嫁やカウボーイなど多様な写真が並んでいます。
South Southeast
出典:amazon
南アジア、東南アジアを中心に撮影された写真集。
カメラに向けられた力強い目線に圧倒されてしまいます。写真にはいつ、どこで撮影されたのかも記録されています。
south southeast / steve mccurry
A Life in Pictures
出典:amazon
Steve McCurryの40年の写真家人生が1冊に。
Steveが旅をはじめたばかりの時に撮影した作品から最新のフォトワーク、初公開の100作品などが掲載されています。当時Steveが残した貴重なメモや、兄妹でありSteveが所属する写真事務所の社長を務めるボニーマッカリー(Bonnie McCurry)とのユニークなテキストなど、とても価値のある写真集です。
さいごに
Steve McCurryの写真作品には彼が歩んできた人生と地球のパワーが詰まっています。
ただの旅ポートレートや風景写真ではなく、一枚一枚に物語があり、写真で世界中にインパクトを与えるほどの影響力を持っている写真家です。
今回ご紹介した作品以外にもさまざまなテーマの写真を発信しているので、ぜひSteve McCurryのポートフォリオサイトや写真集を見てください。