CP⁺2025×関西写真部SHAREのコラボワークショップでゲスト出演していただく、フォトグラファー・なっつさんにインタビュー。
見る人の心を惹きつける子どもたちの自然体な姿と、そのロケーションを最大限に活かした写真の色味、美しさがなっつさんの作品の魅力です。
今回はなっつさんが現在の撮影スタイルに辿り着くまでのお話や、写真と動画それぞれの撮影の難しさなどについてお聞きしました。
なっつ
こどもの出産を機にカメラの魅力に目覚め、instagramでは我が子と巡る色とりどりの季節を写真・動画で表現し、投稿している。 カメラマンとしてはキッズ・ファミリー撮影を中心に、スタジオ撮影、企業のプロモーション撮影、芸能関係の宣材写真など、多岐にわたるスチール・ムービー撮影を手掛けている。 現在はカメラ講座やフォトウォークなどの活動も行っており、初心者からプロを目指す方々まで、幅広い層に向けて写真の魅力を伝えている。
子どもの出産をきっかけにカメラをはじめる
ーなっつさんがカメラをはじめたきっかけ、カメラマンになろうと思ったきっかけを教えてください。
カメラを始めたきっかけは、子供を出産したことです。夫が趣味で使っていた一眼レフを試しに使ってみました。最初はまったくうまく撮れませんでしたが(笑)それでも撮影するのはとても楽しくて、どんどん夢中になっていきました。ハマるととことんのめり込むタイプなので、気づけばキットレンズを売って単焦点レンズを購入していました(笑)
その後、子供が1歳を過ぎた頃、ツイッターで見つけたママカメラマン主催の写活ピクニックに参加したんです。そこで「フルサイズっていいかも!」「望遠レンズ欲しいかも!」「私もカメラマンになれるかな?いや、なりたい!」と刺激を受け、あっという間にフルサイズカメラに買い替えました!その頃にはママ友を撮る機会も増え、「やっぱり母と子供が一緒に写る写真って少ないよね…」という話をきっかけに「親子の大切な瞬間を形に残すお手伝いができたら素敵だな」と思い、撮影会や出張撮影を始めるようになりました。
ーカメラマンとして一番最初にした仕事を覚えていますか?覚えている場合、その時のエピソードや気持ちを聞かせてください。
最初にお仕事として撮影させてもらったのは、クリスマスシーズンの撮影会でした。ドレスコードはサンタさんで、「ちびっこサンタ撮影会」を開催したのを覚えています!当時SNSで繋がっていたママ友たちがたくさん参加してくれて、本当に嬉しかったです。
あちこち走り回る子供たちに翻弄されながらも(笑)ママと子供の笑顔を引き出せた瞬間はとても幸せで、「これって私の天職かも!」と感じました。
そして、この時のお客さんの一人が後にカメラマンになり、「あの時の写真が嬉しくて、私もカメラマンになりたいと思ったんです」と言ってくれたことは、今でも特別な思い出です!
ーカメラを仕事にするのは大変でしたか?どんなことに苦労したか聞きたいです。
正直なところ、「これだけで生活しよう!」なんて全く思っていませんでしたし、むしろ無理だろうと思っていました。扶養内でちょっぴりお小遣いが稼げたらいいな、くらいの気持ちでした。でも、とにかくがむしゃらに自分の「好き」を追求していった結果、自然と私らしさが形になり、それがたまたま時代の流れにマッチしたのか、ありがたいことにたくさんのご依頼をいただけるようになりました。
もちろん壁はたくさんありました。まず第一に、私はSNSがとても苦手だったんです(笑)「インスタ?なにそれ?私なんて全然キラキラしてないし、飽き性だから定期的に更新なんて無理!」と思って、ずっと手をつけられなかったんです。それでも、せっかく撮った写真を見てもらいたい気持ちは強くて。今思うと、承認欲求の塊だったんだと思います(笑)「いいね!」がつくのはやっぱり嬉しいですから。
でも、写真が上手な人は世の中に溢れています。なので私は「私にできて、好きで、続けられて、求められていることって何だろう?」と考えました。それを考えて実行することも、とっても大変でした。これこそが「ブランディング」であり「マーケティング」だったんですよね。
ーSNSが苦手だったのはとても意外です!どの写真もお子さんが素敵に写っていて、真似したくなる作品ばかりなので
実は、私の子供はとてもやんちゃで頑固、人見知りが激しいうえ、自由に動きたがるタイプで、正直なところ、写真撮影には向かなすぎる(笑)でも、そのおかげで、子供を思うような場所に留まらせるにはどうコミュニケーションを取ればいいのか、笑顔を引き出すにはどんな工夫が必要なのか、試行錯誤する時間をたくさん持つことができたんです。この経験は、家族写真を撮るうえで非常に重要な学びになりました。
そこに私の変に几帳面な性格(笑)と、美的感覚が加わり、今のスタイルに落ち着いたのだと思います。
「1枚1枚がポストカードみたいに美しい!」と褒めていただけたり「うちの恥ずかしがりの4姉妹がいつも自然な笑顔で撮影を楽しめてるのはなっつさんのおかげ!」とか「やんちゃすぎる3兄弟がちゃんと3人揃って撮れるのはなっつさんだけ!」なんてお声も頂きます!(笑)
ただ技術を磨くだけではなく、家族の気持ちに寄り添い、一瞬の中にある幸せを感じ取ることが、私の撮る写真を特別なものにしてくれたのかなと思っています。振り返ると、苦労…というよりも、「好き」で夢中になってやり続けていたことが、気づけば形になり、ありがたいことにお仕事として実を結んだ、そんな感覚です。
その瞬間に心を動かされたものを大事に
ーなっつさんのInstagramはロケーションがとても美しくて、自然やお花が素敵ですよね。撮影をする上で意識していることはなんですか?
まずは場所選び!どうしてもこれだ!というイメージがある時は、人のいない平日の早朝を狙ったりもします。
それから、その日その場所での光やロケーションの良さを最大限に生かすこと。撮影時には、レタッチ後の完成イメージが頭の中でだいたい決まるので、そのイメージをその場でより良い形に引き上げられるよう意識しています。
そして大事なのは、その瞬間「好き!」「かわいい!」と心を動かされたものは何なのかを考えること。風景がメインなのであれば、その風景の中で一番美しいと感じた見せたいものは何なのか?常に意識して撮影しています。
ー撮影のときにそこまで考えているから、見ている人の心も動かせるんですね!
人物写真であれば、今見せたいものは表情なのか、仕草なのか、雰囲気なのか。そう、写真のイメージを決めるのは人の表情だけじゃないんですよね。手や目線、何気ない仕草からでも「好き」や「大切にしているもの」って伝わります。
たとえば、「我が子の一番大好きなパーツはここ!」とか「親子で絵本を読んでいるこの瞬間が愛おしい!」とか「このファーストトイはママが妊娠中にはじめて作ったもの!」といったエピソードがあれば、そこに込められた思いを丁寧に写真に映し込めるよう努めています。
ー愛用カメラとお気に入りポイントを教えてください。
現在はソニーのα7 IVを愛用しています。軽量でありながら高画質ですし、瞳AFの精度がとても高いので、子供やペットの動きのある瞬間をしっかり捉えられるところが気に入っています。
被写体には自然な表情でいてもらいたいので、私自身はあまり「止まってください」と指示を出さずに動きをつけながら撮影を進めるスタイルなのですが、このカメラならそのやり方がよりスムーズに実現できます。α7 IVは動画撮影機能も充実しているので、写真だけでなく映像の仕事にも対応できるのが嬉しいポイントです。
ー特にお気に入りの写真を見せていただけますか?その理由・エピソードを聞かせてください。
お気に入りの写真はたくさんあって、正直ひとつに絞るのは難しいんです。でも、最近特に好きなのがこの写真です。
春の訪れを告げる鮮やかなミモザの花に囲まれ、赤ちゃんが穏やかに眠る姿。木々の間から差し込むこもれびが、ぽかぽかとした陽だまりのような温かさを感じさせてくれる一枚です。写真を撮る中で、お天気や光と影、風の具合、花の咲き具合、そして被写体の表情や動きといった全ての条件が揃うことって、なかなかなかったりするんです。この日の写真はどれもお気に入りになるほど、理想的な撮影ができた日でした。
また、この写真を見た方から『こんな風に撮って欲しい!』『自分でも撮ってみたい!』とたくさん言っていただけるのも、この写真が好きな理由の一つです。この一枚が誰かの撮影のインスピレーションになっていると考えると、とても嬉しくて励みになります。
ー最高の作品を撮るために欠かせないことはありますか?
準備が9割だと思っています!ベストな日時、ロケーションの把握、撮りたいイメージ写真の具体化、それに必要と思われる機材の準備。心配性なので常に荷物が多いのですが、そのおかげで撮れた写真も多くあります。
特に”なっつといえば”でおなじみ?!脚立は常に持参しています(笑)身長が小さいので、あらゆる角度から撮影するためには欠かせません!
動画を通して「物語」の一部をそのまま残すことができる
ーなっつさんのリール動画を拝見した時、美しい動画に魅了されました!写真だけでなく、動画でも残そうと思ったのはなぜですか?
写真は一瞬の美しさを切り取るものですが、動画にはその瞬間の「時間の流れ」や「背景の音」まで伝える力があります。
特に、家族の大切な瞬間や子どもたちの成長を見守る中で、写真だけでは捉えきれない「表情の変化」や「動き」を映像で残したいと感じたんです。写真が静止した瞬間なら、動画はその背後にあるストーリーを感じさせてくれる。声や笑い声、足音、風の音など、すべてを含めてその瞬間を再現できる点に魅力を感じました。
また、家族や友人たちのやり取りや、普段は見逃してしまうようなちょっとした感情の動きも、動画だと自然に切り取ることができ、より深い思い出として残せると思っています。このように、動画を通して「物語」の一部をそのまま残すことができる点が、私にとって魅力的であり、写真だけでは表現できない新しい世界を広げてくれると思っています。
ー子供の撮影は機嫌をとったり、イメージ通りの動画を撮るのが大変そうなイメージですが、実際の撮影ではどうですか?
確かに難しいこともありますが、無理にイメージ通りにしようとせず、自然体を大切にしています。子供が楽しく遊んでいる様子を見守りながら、その瞬間の「らしさ」を切り取るよう心掛けています。
ただ、うちの娘はすっかりモデル慣れしてきて、私が何か言う前に「こんな風に動けば可愛いかな?」とアイディアを出してくれることが増えてきました(笑)彼女の意見を参考にしながら、私も楽しく撮影しています。ちょっとしたおでかけはスマホでの動画が多いのですが、最近はそんな風に一緒に動画を楽しんでくれるので、親子のコミュニケーションツールのひとつにもなっていると思います(笑)
ー色味も凄く綺麗ですよね。編集時に工夫していることがあるのでしょうか。
全体のコントラストやトーンが統一されるように意識しています。色味はよく『なっつカラー!』と言ってもらえますね。肌の色や背景の色が調和するように調整し、ナチュラルでありながらも温かみのある仕上がりを目指しています。人と比べて、割と細かいところが気になるタイプなので(笑)割とちまちま手を加えていたりします。
ー写真と動画では撮影の難しさが違うと思いますが、それぞれ意識していることがあれば聞かせてください。
そうなんです、正直はじめはそこに苦戦しました…!写真で使う脳と動画で使う脳って、全然違う場所だ!と思うくらい、切り替えが難しかったです。
写真は完成された状態を写すもので、動画は完成形に至るまでの過程を写すイメージです。写真の魅力は「一瞬を切り取る」ことなので、その瞬間の光や構図、表情、雰囲気など、全てがパズルのピースのように噛み合うタイミングを逃さないようにしています。そのため、被写体とのコミュニケーションや、撮影する環境の観察力がとても大切だと感じています。
一方で動画は、動きや音、時間の流れを記録するものなので、「一瞬」ではなく「物語」を意識することがポイントです。動画ではその場の空気感や自然な動きをいかに美しく残せるかを考えながら撮影しています。編集の段階で完成形が見えるので、撮影時には「後でどんなシーンを繋げるか」も頭に置いておくようにしています。
どちらも違う魅力があって、それぞれの難しさを楽しむことが、より良い作品を生み出す鍵かなと思います!
一番の努力は子育ても仕事も「好き」に全力で楽しむこと
ーなっつさんは撮影や編集のスキルをどうやって身につけたんですか?
基本は独学でした。ひたすら好きな写真を研究したり、真似したり。わからないことはひたすらインターネットや図書館で調べて。時々、オンライン講座やオフライン講座を受講することもありましたが、実際に撮影しながら学ぶことが一番多かったです。宣材撮影や広告撮影に必要なライティング技術はスタジオのオーナーから直接学ばせて頂き、あとはもう実践あるのみでした。成功と失敗を重ねることで自分の作風に合うものを試行錯誤して取り入れています。そんな時間も楽しくて、学生時代よりもカメラマンになってからの方が頭使ってる!学んでる!と感じてます(笑)
ー6歳のお子さんを育てながら、カメラマンとしても活躍するために努力していることは?
子育てと仕事の両立は正直大変なこともありますが、やっぱり一番は「無理をしないこと」が大切だと思っていて。正直私は時間の使い方はあまり上手な方ではなく、気になることはとことん!細かいところまでやりたいタイプなので、そのせいで家庭をおろそかにしてしまった時期もあります…。当時の夫のサポートと娘の応援に、今でもとっても感謝をしています。その分オフの日はしっかり遊んで親子でエネルギーをチャージしています。
子育ても仕事も「好き」に全力で楽しむことが、私の一番の努力なのかもしれません!
ーなっつさんが今後チャレンジしてみたいことはありますか?
たくさんあります!カメラマンとしての一番の目標は昔から『娘のウェディングフォトを撮ること』ですが、その前に、娘がもうすぐ小学生になるので、これまで得た技術や知識を作品撮りとしてまとめ、写真集を作るのも素敵だなと思っています。実は我が家にはかわいいわんこもいるので、娘が学校に行っている間は、わんこと一緒にセルフィー撮影を楽しみたいとも考えています。また、最近は海外からのお客様もとても増えているため、より英語スキルも身に着けたいですね!
そして、現在すでに取り組んでいることですが、写真の分野では宣材写真、雑誌や広告の撮影技術をさらに磨き、動画では企業のPVやアーティストのMV撮影のスキルを向上させ、その分野でも仕事を増やしていきたいと考えています。好奇心旺盛なので、今後もいくつになっても学び続け、マルチに活躍するクリエイターでいたいな!と思っています。
CP⁺2025 ワークショップについて
ーCP+2025ワークショップの登壇依頼がきた時のお気持ちを聞かせてください。
とても光栄で嬉しかったです!カメラマンになってからはぼぼ毎年、一般参加してきた憧れのイベントですから。同時に「自分の経験や知識が誰かの役に立つなら」という思いで参加を決めました。
ー今回は「目指せリール映え!スマホで撮るおでかけファミリー動画の作り方」をテーマに登壇していただきますが、どんな方に参加してほしいですか?
家族でのおでかけの思い出をもっとおしゃれに、でも気軽に残したい!と思っているママさんやパパさん、そしてキッズたちにもぜひ参加してほしいです。
ーこの記事を読んでいる来場者のみなさんにメッセージをお願いします!
この記事を読んでいただきありがとうございます!これから撮影を楽しんだり、動画を撮ってみたいと思っている方に少しでもヒントや勇気をお届けできたら嬉しいです。撮影や編集に正解はないので、まずは自分の“好き”を大切にして、楽しくチャレンジしてみてください!
また、「顔出しは避けたいけど、可愛くて映える動画を作りたい」という方には、私が実践している工夫をたくさんご紹介しますよ。普段あまり動画を撮らない方でも安心して取り組めるコツをお伝えしますので、難しく考えず気軽にご参加いただければと思います!
子供の成長や家族との日常は、とっても尊くて愛しいもの。その瞬間を、短い動画で楽しく残すコツをお伝えしたいと思いますので、ぜひお気軽にご参加ください♪皆さんにお会いできること、とっても楽しみにしています!
◾️目指せ!リール映えスマホで撮るおでかけファミリー動画の作り方
タイトル | 目指せ!リール映えスマホで撮るおでかけファミリー動画の作り方 |
開催日 | 2月28日(金) |
時間 | 14:30~15:10 |
定員数 | 10組 |
講師 | なっつ |
講師Instagram | https://www.instagram.com/72nattsu_photo/ |